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![]() (岩田様) 皆様、こんにちは。イワタシステムサポートの岩田です。本日はPrometech Techno Forum in Nagoyaへ、ようこそおいでいただきました。これより、パネルディスカッション『産業界がParticleworksに期待するところ、プロメテックに期待するところ、GPUコンピューティングに期待するところ』をはじめたいと思います。 ![]() (岩田様) ディスカッションしていただく前にCAEがこれまでどのように変遷してきたのか簡単に振り返ってみたいと思います。 まず自己紹介ですが、私は1987年にDECという会社に移り、SEとして中部の製造業の皆様に解析のサーバーなどを提案してきました。その後、自動的にコンパック、HPと会社が変わりまして、2003年末に会社をやめて、2004年からイワタシステムサポートを立ち上げました。 イワタシステムサポートは、CAE分野でコンピュータやParticleworksをはじめとするCAEソフトウェアの紹介などのコンサルティング業務を行っております。 さて、これまでのCAEソフトウェアの変遷についてですが、1950年代、60年代にCAEの原型ができてきて、70年代くらいになるとNastranや Marc、ANSYS、Dyna3Dといった主要なソフトウェアが登場してきました。実際に企業でCAEが使われ始めたのもこのくらいの時期かなと思っています。 しかしその頃にCAEを使えたのは、ホストコンピュータやスーパーコンピュータで解析する、本当に先進的なユーザーに限られていました。それが、90年代に入るとPre/Postが出てきました。。これまでメッシュ作成等を手処理でやっていたものが、高価なグラフィック端末ができて、 GUI環境になり、かなり使われるようになってきました。並列化の走りもPVMやMPIが90年代に出てきました。ただほとんどのソフトウェアにMPIが入ってきたのは2000年代なので、実際に現場で使えるようになったのはだいたい2000年頃からだったと思います。 90 年代のコンピュータはUNIXワークステーションということで高価なマシンでした。しかし、2000年代になってくるとINTELのXeonとか、AMD のOpteronなどが登場し、安くて非常に性能が良いということで、先進ユーザーだけでなく、一般的なユーザーでも使えるようになってきたのかなと思います。そして最近、2010年代になってくると、もはやCAEは、設計開発では無くてはならないツールになってきました。 なぜCAEが広まったのか、私は大きく3つの理由があると考えています。 まず、GUIが使いやすくなったということです。特に2000年代、市販のCPUが使えるようになって、OSもLinuxやWindowsが使えるようになって、ソフトウェアベンダーも非常に良いGUIを作るようになりました。これはソフトウェアベンダーの努力とコンピュータの発達の恩恵ではないかと思っています。 そして2番目の理由は、計算能力の飛躍的向上です。非常にコンピュータが速くなったということです。80年代から90年代初めはコンピュータが高価で性能もそれほど良くなかったのが、90年代中頃から2000年代にかけて、非常に高速になってきました。コンピュータの価格性能比が飛躍的に向上したことと、並列処理、特に2000年からMPI並列技術が非常に進歩して大規模で高精度な解析ができるようになってきました。 最後のひとつは、やはり、ものづくりの現場からのニーズです。ユーザーからのリクエストとして、製品の軽量化や高機能化の要求、製品開発期間の短縮や開発費用の低減、高品質化の要求が強まり、CAEが必要とされてきました。 しかしながら今日、CAEの環境は非常に良くなって、素晴らしいソフトウェアも出ているけれども、メッシュを作成しなくてはならないなど、従来の有限要素法、差分法で解決できない課題もまだまだいっぱい残されています。 本日はそういったことも含めてParticleworksで何ができるのか、どういうことを期待するのか、プロメテック・ソフトウェアに何を期待するのか、そして高速化のためにGPUはどう使えるのか、といったところを自由に討議していければと思っています。それではパネリストの皆様、宜しくお願いします。 (岩田様) さっそくですが、三菱化学の堀口さんは、粒子法に早くから取り組まれておられ、言わば粒子法のパイオニア的なお方だと理解しています。粒子法で今、何ができるのか、何を期待されているのか、あるいは何が課題なのか、お話しいただけますでしょうか。 ![]() (堀口様) 三菱化学の堀口です。私たちは素材メーカーですので、もしかすると今日ご出席の方々とは分野がちょっと異なるかもしれませんが、私どもの立場から少しお話しさせていただきます。 素材メーカーのシミュレーションの使い方は、ざっくり言うと2つあります。 ひとつは材料、素材をつくる部分です。プラントなどで材料を作るのですが、そういったプラントなどの社内向け設計シミュレーションです。もうひとつは素材を顧客である自動車メーカーの方々などに使っていただく際に成型加工したり、最近ですとリチウムイオンのバッテリーなど、複数の材料を組み合わせて電池にしたりといった、社内向けというよりもお客様と協力しながら取り組んでいるシミュレーションです。 それぞれについてやっている内容が違いますので、最初に、素材を作る工程でのシミュレーションについてお話しいたします。例えば、石油ではなくてバイオ法でつくった原料から化学素材を作っていくとなると、新しい化学プラントを建てることになります。例えば新規樹脂を製造する場合、粘度の高いものを練りながら製造していかないといけません。つまり、気液の自由界面が複雑に変化するような、反応器の中の問題を解かなくてはならないということで、従来の格子法のソフトウェアではなかなか解析するのは難しいのです。このような場面で粒子法を使わせていただいています。 粒子法を使い始めた当初は、流れだけを計算すれば良かったのですが、その内、「あ、これは結構使えそうだ」ということがわかりまして、現在は第2ステップとして、流れだけではなく、中の温度分布、あるいは添加物をフィードした時に高粘度の液中でどのように広がっていくのかというような、スカラーの拡散の計算にも適用しています。 さらに次のステップとしては、やはり反応そのもの、あるいは相変化、蒸発、揮発などに取り組んでいきたいです。ステップが進めば進むほど要求も高くなっていくわけですが、そういったところに粒子法でチャレンジしていきたいと考えています。 今日プロメテックさんから、Particleworks Ver.4.0の新しい機能のご説明をいただきましたが、このような解析に取り組む場合、物理モデルの組み込みというものが非常に重要になってまいります。なかなか標準の解析だけだと対応ができない解析もあるのです。Particleworks Ver.4.0からユーザーのモデルが組み込めるようになるというのは素材メーカーにとっては朗報で、期待しています。 もう一点、ラボスケールの解析だと、ちょっとしたコンピュータで良いのですが、実機スケールでやりたい場合は、必要となる粒子数がいきなり1000万粒子を超えてしまいます。場合によっては億単位でやりたいという場合もあるのですが、現在、実際に解析しようとするとやはり100万粒子くらいまでが実用的です。つまり、粒子数の限界が一番大きなボトルネックとなってしまっています。この部分はやはりGPUに期待したいと思っています。 一方、素材を使う、お客様と協力しながら材料をつくるシミュレーションの方ですが、これもParticleworks Ver.4.0の新機能の説明でありました、DEMあるいは構造解析との連成機能に期待しています。特に素材を成型していく場合は、どうしても自由表面ですとか、あるいは最近だと複合材で、粒子や繊維を練ったものをどのようにして成型していくのかという課題に取り組んでいるのですが、ここに粒子法を適用させていただきたいと考えています。 まとめますと、キーワードとしては、「粒子数」が今のところ最大の課題かなと、2番目が熱、反応、相変化などのいわゆる「物理モデル」、3番目が「連成」となります。流体だけではなく、構造あるいはDEMとの連成が非常に重要になってきます。そして最後が「検証」です。場合によっては実験が難しかったりするので、シミュレーションだけでやってしまおうということもあるのですが、できれば検証の部分を今後はもっと考えていきたいと思っています。 最後にGPUコンピューティングに期待することですが、粒子数のところで申し上げましたが、やはりGPUを使うと圧倒的な高速化が図られそうだという感触を持っています。私たちのところでもCore i 7での4並列に比べると10倍以上のパフォーマンスの差がでています。10倍というのは非常に魅力的な数字です。 さらに、アナウンスによると今後エヌビディアさんからKeplerがでてくると、それでまた3倍とか、それ以上の高速化が図れるような期待もされていますので、そうすると従来と比べて 30倍とか40倍くらい速くなり、非常に嬉しいなと思っています。できれば速いだけではなく、あまり価格を上げずに低コストでお願いしたいのですが(笑) GPU については2つほど知りたいことがあります。ひとつはメモリ容量の問題でして、現状私たちは4GBくらいのメモリでだいたい100万粒子くらいをやっているのですが、CPUに比べてやはりそこが一番ネックになっています。これをもっと大きくするには、どのくらいのコストがかかるのか、次の世代でもっと増えてくるのかもしれませんが、気になっています。 あとは物理モデルとの兼ね合いですが、物理モデルの自由度を上げるとGPU化が難しくなってくるのかなという懸念がありまして、これについては、間もなくCUDA Dynamic Parallelismというのか、流体ソフトのGPU化が従来一年かかっていたのが一週間でできるようになります、という夢のようなお話もあるようですので、こちらも期待しているところです。 (岩田様) ありがとうございます。次にプロメテックに期待するところ、あるいは日本発のソフトウェアに期待するところという観点から、デンソーの赤池さんに一言いただきたいと思います。 ![]() (赤池様) デンソーの赤池です。私はデンソーに83年に入社しまして、最初こそ冷暖房の部門にいたのですが、その後はずっとCAEに関わってきました。30年くらいこの世界にいますので、その中で感じていること、ということでお話ししたいと思います。 僕がParticleworks に期待することは一個しかないです。 それは、「『早く一人前』になって、外貨をかせげるようなソフトになってほしい」ということです。 僕は、Particleworksは日本発で、外貨を稼げるようなソフトウェアになると思っています。しかもナビエストークス系とは違った方向で、違う事もどんどんできる。僕は以前、あるCAEソフトウェアを早い時期から導入して、一気に100ライセンスまで導入しました。おそらくこういうことをやったのは、世界の製造業ではじめてのことだと思います。このようにソフトウェアをガッと入れてガッと使うということについて、私たちはすごく力を入れています。特に僕も若いころは、あれをやりたい、これをやりたいということで、色々ソフトを探してきては導入してきました。 しかし、その結果どうなったかというと、私たちの会社にあるソフトウェアはほとんど外国製になってしまいました。現在、Particleworksなど一部を除くと会社にあるソフトウェアは、ほとんどが外国製です。 ご存知の通り、デンソーは海外でもトヨタさんと一緒に仕事をしています。そして売り上げの半分以上を海外で上げています。つまり外貨を稼いでいるのですが、 CAEやCADの分野においては全部その稼いだお金を外に出しちゃっている。なんでこんなことをやっているのか、という話なのです。僕もある程度年をとってきましたので、今後の年金のこともありますし、日本の企業が元気になってもらわないと困るのです。そういう意味でも日本のCAEの業界もCADの業界も元気になってほしいと思っています。 ちょっと世界を見渡してみると、欧米は以前からそうですが、例えば韓国や台湾のソフトウェアは最近すごく元気があります。デンソーも、かなり日本でも買っていますし、海外の会社でも買っている。なんでこうなっちゃうの、と。日本の大学の先生方はすごく頭が良いですし、色々なことができているのだけれども、なかなか商用ベースに乗せられるソフトウェアが作れていない。このことが非常に気になっています。 今年の春に、国が支援するあるソフトウェアに関する、最終報告会なるものが東京でありまして、行ってきました。このプロジェクトには、僕はずっと前から期待していました。できることもたくさんあって機能も素晴らしいです。ですが、その最終報告会に行って、すごくがっかりしました。何をがっかりしたのかというと、著名な先生方がたくさんでてきて機能の説明をワーっとやるんです。すごいな、すごいな、と聞いていたのですが、最終報告会ですから、それを世の中に広げましょうということで最後にユーザーからの話が予定されていたのですが、先生方がたくさん喋られたものですから、ユーザーの話は後日やりましょうということでカットされてしまったのです。これで彼らは果たして、ユーザーのことを考えて、本気で使わせようと考えているのか疑問に思いました。 私はシミュレーションソフトウェアについて、考えて具現化するのは大学の先生の役割、商品化して販売していくのはプロメテックさんを含めたベンダーの役割、それを活かして使って、世にバンっと上げていくのは私たち製造業の役割ではないかと思っています。そして全体を力強くバックアップするのは、やはり国だろうと思います。 そういう仕込みが日本は全然できていない。韓国に負けない、台湾に負けない、欧米に負けないソフトウェアを作っていくために、中部の製造業は良いものをどんどん使って活かすというところでは絶対に長けていると自負しておりますので、大学の先生や国を動かす仕組みができたら良いと思います。 繰り返しますが、僕はParticleworksに期待していますし、これから応援していきます。皆様も日本発のソフトウェアを一緒にどんどん応援していただきたいと思います。 (岩田様) 赤池さん、ありがとうございます。越塚先生やプロメテックの方にご意見を聞きたいところですが、まずはもう一方、課題の最後であるGPUコンピューティングについて、ヒューレット・パッカードの小島さんから、今後GPUがどうなっていくのか、どのようにCAEユーザーに貢献していくのか、そのあたりをお話しいただければと思います。 ![]() (小島様) 日本HPでワークステーションの責任者をやらせていただいております小島と申します。 C1060 が乗った私どものマシンを売り出したのがちょうど3~4年前だったと記憶しています。まだその頃は実利用には全く足りておらず、主に大学の先生に使っていただくというところからスタートしました。それが、ここ1年くらいで、ちゃんとGPUのカードを搭載したマシンが毎月販売されるような形になってきました。これは、Particleworksをはじめ、かなり市販のアプリケーションでGPUを使えるものが増えてきて、特に製造業のお客様に使っていただくケースが急速に増えてきたからだと思っています。 ただ、一概に安くGPUコンピューティングができるのかというと、ソフトウェアベンダーさんのライセンスの提供のされ方に依存してきます。Particleworksの場合も、GPUのカードを1枚突っ込んだらいくら、2枚突っ込んだらいくらという形態ではなく、GPUを何枚使っても同じようなライセンスの費用です、という形態であれば、本当に飛躍的に性能を向上させることができるのではないかと思っています。 私どものシミュレーションでも、例えば、市販のアプリケーションで流体系ですと、一番低いものでも2倍、一番速いものだと20倍くらいのパフォーマンスアップが見込めています。私どもといたしましても、安くて、パフォーマンスが画期的に良くなるということでGPUコンピューティングには非常に期待しているところです。 (岩田様) プロメテックの川上さん、いかがですか。 ![]() (川上) プロメテックの川上です。いかに計算が速くなったとしても使い物にならない道具を提供してはいけませんので、Particleworksを使い物にするためには、これからも産業界の皆様にどんどん鍛えてもらわないといけないと思っています。皆様に実際に触っていただいて、実験と合わない問題については、共に汗をかいて、合わせ込みをやっていく必要があります。エンジニアリングで使える道具かどうかを判断されるのは製造業の皆様で、その期待に応えられるよう道具として仕上げていくのがプロメテックの仕事だと考えています。 物理モデルに関しましては、越塚先生の研究室でもかなり研究が進んでいます。しかしながら、私たちがこういうモデルを作ったから産業界で使ってください、という一方方向だけではなかなかソフトウェアとして早く成長するのは難しいものがあります。やはり、企業の皆様と一緒に汗を流してだした成果を、できるだけ産業界に使える形で外に出していきたいと考えています。 今回はParticleworks Ver.4.0のカタログに実際に多くの会社様に企業名をだして事例を掲載させていただくことにご協力いただきましたが、実は、載っていない事例、裏ではやっているけれども、表に出すのは難しいという事例がまだまだたくさんあります。 産業界の皆様へのお願いとしては、汎用ソフトウェアとしてParticleworksを育てるという意味で、あるところまではオープンにさせていただけるような仕事をいただけると非常にありがたいと思っています。例えば、プロメテックは開発から2年、3年後に汎用製品化するようがんばります、その間に企業の皆様はエンジニアリングのノウハウをため込んでください、そこで競争力をつけてくださいという形ができると、Particleworks はもっとソフトウェアとして成長していくのかな、と思っています。 (岩田様) 高速化というところで、GPUの高速化が今後どうなっていくのか、エルザジャパンの高山さんからお話しいただければと思います。 ![]() (高山様) エルザジャパンの高山です。営業していて、本当に使っている人がいるのか、とよく聞かれますが、最初は大学の先生方が研究の為に使っていましたが、昨年くらいからそのような動きを脱しまして、我々でいうと6割くらいのお客様が民間企業様という状況です。クラスタも、かなり多くの企業様が組まれています。エルザジャパンという商流から見ても、かなり導入が進んできているという印象を持っています。今GPUを使用していないと結構遅いのではないかという声が非常に高まっているというのは事実だと思います。やはり商用アプリケーションのGPU化が非常に進んできて、今まではシングルGPUしか対応していなかったものが、マルチGPU、マルチノードにも対応してきているので、非常に運用しやすくなっているということがあると思います。ライセンスの問題はありますが、それでもGPUを購入されるケースは増えてきています。 1ノードでたくさんのGPUをぶら下げるやり方か、何ノードかで1ノードにGPUを2枚くらい乗せるやり方か分かれてきているのですが、1ノード8GPUという使い方が増えてきています。ライセンスが増えても構わない、もしくはGPUが増えてもライセンスは増えないというアプリケーションを使っているユーザー様に関しては、やはり大規模化に思いっきり進んできているかなと感じています。 GPUには今後も期待して良いと思います。次のMaxwellというアーキテクチャーも見えてきておりますので、NVIDIAは今後も市場を先行して走っていけるのではないでしょうか。 (岩田様) ありがとうございます。越塚先生、赤池さんから、大学発ソフトウェアについて、あるいはユーザーをもっと尊重した方が良いのではないか、もっと巻き込んだ方が良いのではないかというご指摘がありました。コメントいただけますでしょうか。 ![]() (越塚教授) 実は私も赤池さんと非常に問題意識が似ています。ちょっと立場が違うので偉そうに聞こえてしまうと申し訳ないのですが、特にキーワードとして「外貨が稼げるようになってほしい」という点は、まさに私もそう思っています。 ただ、80年代、欧米で商用ソフトが次々でてきた時には、日本の環境はとても悪かったのですが、今は改善されています。 ひとつは、以前は、国はソフトウェアの開発に対して一切予算はつけてくれませんでした。ものづくり、という意味ではある意味健全な思考だとは思うのですが、ソフトウェアは抽象的な実体の無いものであるという認識で、ソフトウェアには全くと言って良いほど予算がつかなかったのです。それが今は大幅に改善されていて、ソフトウェア開発にも国のお金がつくようになっています。 2番目は、国プロで作ったソフトウェアを商用化するのに、知財の問題とか、大学の仕組みの問題があって、80年代は商用化できにくい状況がありました。欧米はその当時、サッチャーさんやレーガンさんが登場し、知財も、たとえ国の予算でつくったものであっても商用コードにして良い、という流れでしたが、日本はそのような状況にありませんでした。しかし、これも現在は大きく改善されまして、今は国プロで作ったソフトウェアをそのまま無償で会社へ持って行って商用化するということができるようになりました。大学の法人化以降、産学連携の仕組みの中で、大学と会社が非常に密接に関わってやっていくということが可能になっています。プロメテックの住所も、私が所属している大学の住所と全く同じで、まさに今、大学の中で商業的な活動を行っています。 ただ、それでもまだ不十分なところがひとつ残っておりまして、それが、赤池さんがおっしゃられた「外貨が稼げるような」というキーワードにちょうど収まる、「グローバル化」だと考えています。 やはり、英語圏ではない日本はこれまで非常に不利でした。商用コードの多くは、流体だとほとんどイギリスがオリジナルです。今、世界的にグローバル化の潮流がある中で、日本の大学はグローバル化に遅れているところがありまして、ご指摘があった台湾とか韓国に比べて、グローバル化の程度が足りないと思っています。今グローバル化すると、競争相手はアメリカ、イギリスだけではなくて、台湾、韓国が非常にライバルとしては厳しい存在となります。ご指摘のようにソフトウェアのこれからの開発ということでは非常に厳しいと考えています。 大学もグローバル化しなくてはいけないのですけれども、今、私たちのところは秋入学、ということで、秋入学するとグローバル化するのかというとやや短絡的かもしれませんが、グローバル化というものをさらに考えていかなくてはならないと思っています。そのためには一番上に国があるのではなくて、お客様というか、使っていただくものづくりの民間の方が、一番上にあって、ご指導というか、そこを見ながら開発していくというのが一番重要だと常々考えておりました。 ただ、プロメテックはまだ小さい会社ですので、あまり厳しくご指導されると死んでしまう場合があります(笑)、死なない程度に厳しくご指導いただければ良いなというように考えております。 (岩田様) 越塚先生、どうもありがとうございました。プロメテックの創業者である藤澤さん、この点いかがでしょうか。 ![]() (藤澤) 私は会社を創った方でございますので、赤池さんのご指摘は耳が痛いところがございます。実は私は、大学の産学官連携研究員という立場で国のお金を使って大学の技術を産業界に使っていただくという仕事をしていたことがあります。その時の最大のフラストレーションというか、良くないなあと感じていたのが、ある1 営利企業のために、モノを作っちゃいかんと言われたことです。国の税金を使っている以上、1メーカーのために作ってはいけない、あまねく使えるようにしなくてはならないと。そうすると誰のために作っているのだということになり、最終的に国からバジェットを持ってくることが目的のような感じになってきて、それでできたものを、どうぞフリーなのでご自由にお使いくださいと。そうなってしまうと、結局は誰一人として使わないソフトウェアになってしまうんです。そこにすごくフラストレーションを感じていました。 プロメテックを創業したのは、やっぱり1ユーザーすらいないソフトウェアを他のユーザーが使うわけがないでしょうと、本当に、エンジニアリングで1ユーザーであっても使ってもらえるソフトウェアを作ろうということで会社を興したわけです。 産業界に出すためには、ローンチカスタマーの役割というものが大事ではないかと思っています。飛行機の世界ではボーイング787のローンチカスタマーは全日空さんでしたが、まずはユーザーさんがいて、そのユーザーさんの希望の中で、ソフト、もちろん解析機能だけではなく使い勝手も含めて、ローンチカスタマーの希望をまず全力で叶えられるようにする。そして、それがクリアできた時にはじめて横展開があるのではないかと、強く感じています。 (岩田様) スズキの熊野さん、もしよろしければコメントいただければと思います。 Comments are closed.
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