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[パネリスト] ・トヨタ自動車 株式会社 HV先行開発部 プロフェッショナル・パートナー 梅村 厚 様 ・スズキ 株式会社 技術管理部CAE推進課 課長 砂山 良彦 様 ・株式会社 デンソー 技術開発センター DE推進室 室長(部長級) 赤池 茂 様 ・三菱化学 株式会社 四日市事業所 開発研究所 生産技術室 モデリング技術 研究員 宮坂 悦子 様 ・株式会社 本田技術研究所 二輪R&Dセンター 3開発室 第2ブロック 研究員 佐藤 勝彦 様 ・株式会社 IHI R&Dテクノセンター 解析技術部 主任研究員 市東 素明 様 ・株式会社 日本製鋼所 広島研究所 課長 富山 秀樹 様 ・マツダ 株式会社 ITソリューション本部 エンジニアリングシステム部 CAD/CAMGr マネージャー 中村 貴樹 様 ・三菱自動車工業 株式会社 管理本部 エンジニアリングIT部 エキスパート 岡田 芳伸 様 ・ヤマハ発動機 株式会社 技術本部 技術企画統括部 デジタルエンジニアリング部 主務 嶋田 喜芳 様 ・株式会社 村田製作所技術 事業開発本部 マテリアル技術センター 化学材料開発部 係長 松本 修次 様 ・ブラザー工業 株式会社 ES開発部 プロフェッショナル・エンジニア 小室 勝広 様 [コーディネーター] ・有限会社イワタシステムサポート 代表取締役社長 岩田 進吉 様 ![]() 有限会社イワタシステムサポート 岩田 進吉 様 皆様、こんにちは。イワタシステムサポートの岩田です。パネルディスカッションの司会進行を務めさせていただきます。 本日のテーマは、以下のとおりです。 「Particleworksユーザー発!ユーザーの現場から見えてきた開発課題と期待」 1.Ver.5.0以降の機能改良要望をユーザーからプロメテックへどう伝えるか 2.マルチコアCPUやGPGPUの普及を踏まえたParticleworksへの期待 わかりやすく言うと、1は「ユーザーの声、要望を新バージョンへどう反映させるか」、2は「並列化処理を用いた高速化への期待」だと理解しています。 進め方ですが、最初に株式会社デンソーの赤池さんに、ユーザーの声という観点からお話しいただきたいと思います。 続いて、スズキ株式会社の砂山さんから、並列化の処理を用いた高速化について、現在日本自動車工業会で取り組まれている内容をお話しいただきます。 その後、各パネラーの方々からの自己紹介と、本日の2つのテーマについてコメントをいただきたいと思います。最後にパネラー同士のQ&Aや、質問あるいは提言などを自由にお話しいただければと考えています。 それでは赤池さん、宜しくお願いします。 ![]() 株式会社デンソー 赤池 茂 様 私が本日お話をする内容は、2013年9月にプロメテックが東京で開催した「Prometech & G-DEP Simulation Conference 2013」でもお話しさせていただいた講演の抜粋となります。その時に聞かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご容赦いただければと思います。 私の部署はデンソーの技術開発センターの中にあり、全社から様々な難しい問題を持ち込まれる部署となります。そのため、これまで様々なことにトライしてきました。 現在Particleworksのユーザーとして使っていますが、残念ながら、なかなか我々が求めるような良い解析はできていませんでした。 先ほどParticleworksの新機能を紹介いただいた中で、粒子が細かいところに入り込んでしまうという現象について説明がありましたが、実際に我々の解析でも、そのような現象が起こり、プロメテックに対応してもらって、ようやく解析ができるようになった、ということもあります。 まず最初に、デンソー社内でCAEの使われ方がどのように変わってきたのか、ということをお話しさせていただきます。 弊社のある役員から聞いた話になりますが、90年代の頃、CAEはプレゼンのネタだったそうです。その頃は、ヨーロッパなどへ行くと、結果が正しい、正しくないはさておき、とにかくCAEのデータを持ってこい、持ってこないとお前のところとは商売しないと散々言われました。 2005年頃になって、やっと参考資料として設計にCAEが使われるようになってきました。そして現状はどうなっているかというと、一部の解析は、試作の置き換えができるまでになってきています。 というのも、よくCAEは万能だ、こんなことができた、あんなことができた、と言われることがありますが、実際はまだやっぱり一部分しか解析できていないと思っています。 なぜかというと、実際の現象はマルチフィジックスですので、流れだけを解いたとしても、じゃあ熱がどうだ、という話になります。そうすると結局足りない。現実的にはまだ一部の解析に留まっているというのが実情です。 デンソーは結構早くからParticleworksを使っていますが、最初はあれをやってもダメ、これをやってもダメで全然使えないソフトウェアでした。社内で非難の的となり、困り果てていたのですが、昨年、このモータ冷却の事例で使えるようになって、依頼部署から初めて「ありがとう」と感謝されました。デンソー社内で初めてParticleworksの価値を認めてもらえた事例だと言えます。 この事例について説明しますが、モータがくるくる回って熱を発します。熱を発するので、油で冷やしたいという事例になります。油の流れが発生し、飛散もあり、流体の厚いところと薄いところ、油が無いところもあって、熱伝導の形態もそれによって当然変わってきます。こういう問題をやりたいと思ったのが事の発端です。 VOFを使って解析を試みたのですが、ご存知のとおり、流体占有率の問題から、流体が少ない部分や厚みがある部分の計算をするので、流体の表面の境界のところがどうしても不鮮明になり、また飛散もできるので全然計算できませんでした。モータ開発の部署から、これでは使えないと言われました。 そこで、粒子法を使ったのですが、粒子法では飛沫や飛散も解析できますし、厚い流体のところ、薄い流体のところも計算できます。ただ生産形状でかつ熱伝導まで解析を実施した事例がなく、大規模な計算になってしまうので、そこは越塚先生に相談してなんとかできないかと考えています。 我々は、モータ熱伝導の解析を実行するために、オリジナルな手法を考えました。 厚い流体のところや薄い流体のところ、そしてコイルまでも粒子法だけでやろうとすると、粒子を作らなければならないので、流れはまあまあできるかもしれないが、熱伝導まで考えると、とんでもない話になってしまいます。そこで社内でどのように計算しようかと検討を重ねました。 最終的には、流れの解像度と熱伝導の解像度が違ってきますので、流れの解像度は、飛沫・飛散も含めた形で行ない、熱伝導のところは従来法を活用するという考えに至りました。粒子の流速を求めて、その上に格子法をマッピングし、マッピングした流速を配置して、それでメッシュ毎の間隔を出せばよいのではないか、という考え方に辿り着いたわけです。 その結果、モータ解析の温度との関係、計算値の相関を取ってみると、誤差はあるが、おおよその温度を予測することができまして、結果、かなり使えるね、という話になりました。 モータが傾いたとき、流れの形態が変わったり、一か所で吹いたとき、二か所で吹いたときどうなるのか、他のケースでも試しましたが、同じような精度を出すことができました。 ここまで出来たのですが、私はやはりParticleworksはまだまだ弱い、機能が足りないと思っています。あらためてプロメテックへの要望をお伝えしたいと思います。 (1)がむしゃら感を持つ 今までデンソーが付き合ってきたベンダーさんは、がむしゃら感があって、あれもやります、これもやります、とにかくやります、ととにかく、がむしゃらにやっていたのですが、その点、プロメテックは弱いなと思います。 構造計画さんも、出資された以上は腹を据えて、金は出すからParticleworksをしっかり作れよ、というところまで言ってくれると非常に心強いなと思っています。 また、カンファレンスの時にも提案したのですが、Particleworksのユーザー会を作ってほしいと思っています。ユーザーが単独で、あれも作ってくれ、これも作ってくれと言うと、プロメテックも開発しづらいと思います。ユーザー会で、こういう機能は、絶対必要だよね、と束になってかかれば、プロメテックもやりやすいのではないでしょうか。 (2)基本機能を早期に作り上げる プロメテックには以前から基本機能の実装を色々とお願いしていますが、これは2年かかります、これは3年かかります、と言われます。我々はとても2年、3年も待てません。基本機能すら早期に出来ないというのはソフトウェアとしてはダメです。 (3)八方美人にならないで、得意な分野を確立する 前回のパネルディスカッションでトヨタの方もおっしゃっていましたが、Particleworksは八方美人なソフトウェアです。あれもできます、これもできます、という雰囲気はあるが、いざやってみると出来ない。このソフトウェアはこの分野に強いとユーザーが思えたら、絶対に強い製品になります。まず得意な分野を確立してほしいと思います。 (4)技術バカな会社から脱皮 ユーザーとしては、プロメテックが技術バカな会社になると非常に困ります。機能的にこれはすごいから実装しよう、ということばかりが優先されて、ユーザーが使いにくい状況にならないようにしていただきたい。いくらすごい事が出来たとしても、ソフトウェアとして使いにくいとユーザーは離れます。 (5)コア技術以外のところは、他社と連携(海外含む) プロメテックはまだ中小企業だと思いますので、できない分野、合わない分野は、第三の会社を利用するというのもひとつの手だと思います。 また、海外のベンチャー企業はそれぞれの国のお金を引っ張って開発を加速させています。我々大企業の力を利用してでも、プロメテックもお金を集めてくるということが必要ではないでしょうか。 (6)税金を使う企てや、外貨を稼ごう 私も年をとって年金の話も気になるのですが、デンソーや他の企業もそうですが、海外のソフトウェアベンダーにかなりのお金を払っています。せっかく我々が海外で稼いできたお金をまた海外に出すというのはもってのほかで、私は海外で稼いだお金を国内で使うようにできないかと常々思っています。そういった意味でもプロメテックを応援しています。一緒にしっかりと外貨を稼げるソフトウェアを作りましょう。 日本の大学の先生はすごく頭が良いのに、なかなか良いソフトウェアが出てきません。そんな中、Particleworksには越塚先生という素晴らしいブレーンがいて、これまで出来なかった解析ができる。Particleworksは日本発の世界に通用するソフトウェアに絶対なり得ると思っています。皆でParticleworksを応援して、立派なソフトウェアにしていきたいという思いがあります。 岩田様 どうもありがとうございました。続いて、スズキの砂山さんから、自工会で取り組まれている内容を中心に、並列計算による高速化という観点からお話していただきます。よろしくお願いします。 ![]() スズキ株式会社 砂山良彦様 私は、スズキ株式会社の技術管理部 CAE推進課というところで、CAEのソフトウェア、ハードウェアの導入管理、それから解析の効率化のためのシステム開発や、CAE技術の標準化を担当しています。 今日は、日本自動車工業会の委員として、ここ2年くらい取り組んできたGPGPU調査についてご紹介させていただければと思います。 まず、自工会についてですが、活動目的は自動車工業と日本の経済の発展に寄与する活動を行なっています。現在11社が委員を務めています。 自工会の組織は、10の一般委員会と、4つの特別委員会で構成されており、先週開催したモーターショーも、この特別委員会で企画・運営しています。 GPGPU調査につきましては、電子情報委員会の下にあるスパコン先端技術調査タスクというところでやっています。ご参考までに親組織になる次世代スパコン検証ワーキングでは現在、京コンピュータの産業利用に関する調査を行なっています。 CPUのクロック周波数が頭打ちになり、CPU単体の性能向上が劇的には見込めない状況で、メニーコアを活用していくというのがひとつの有力な方法と考えています。 先月発表されたスパコンTOP500の中で、TOP10でメニーコアをアクセラレータとしたコンピュータは、ちょうど1年前は3台でしたが、今年は1台増えて、GPGPU2台、Xeon Phi2台の計4台になっています。 しかしながら、ここに理論性能値と、LINPACKで測定された性能値が書いてありますが、CPUだけを採用したコンピュータだと理論性能に対するLINPACK性能が80%以上いっているのですが、メニーコアのアクセラレータを使った計算機はまだ実効性能が低く、そういう意味でメニーコアの利用技術は発展段階にあるのではないかと考えています。 私どもが一番気にするのは、実際の解析モデルを使って、市販のCAEソフトウェアでどのくらいのパフォーマンスが出るのか、その実用性を知りたいということです。なかなかこういうことを個社でやると幅広く調査できませんので、自工会の枠組みで取り組んでいます。 もうひとつGPGPUに期待しているところを話しますと、GPGPUは消費電力に対する理論性能が非常に高いということです。計算能力は上げたいが、省エネ化も考えていかなければならないというニーズは高く、そういうところに期待しています。 2012年までは構造解析をメインにベンチマークを行ないました。Abaqusも、GPGPUを採用することによって2倍以上の高速化が図られました。高速化した分、ソフトウェアのライセンスを減らして、ハードウェアを入れることを考えても、コストメリットがあるのではないかと、今年1月のNVIDIAのユーザーカンファレンスでも紹介させていただきました。今年は特に流体のソフトウェアに着目してテストを進めています。 余談になりますが、1986年にスズキでは、日立S-810というベクトル型のスパコンを導入したのですが、この時の最大性能が630MFLOPSで、現在GPUのK40では、1.43TFLOPSです。約2000倍ですよね。こういう高速デバイスを手軽にデスクトップで活用できる時代が来ているんだなということを実感しています。 最後に、ちょうど結果が出たばかりで、まだ雑多な形でしかお見せできないのですが、下記の構成で、Particleworks Ver.4.5を使って、25万粒子と233万粒子でテストしたのでご紹介します。 計算機 HP Z820 HP ProLiant SL250s CPU Xeon E5-2640 2.5GHz Xeon E5-2670 2.6GHz コア数 12/台 16/node メモリ 48GB/台 96GB/node バス周波数 1333MHz 1600MHz GPGPU K40,C2075 K20X このテストの結果、Particleworksは、GPGPUの計算高速化の効果が非常に高いということがわかりました。 25万粒子で1CPUの計算時間と比較すると、C2075は91%、K40は96%の短縮、GPGPU同士(C2075:K40)で比較しても半分ぐらい短縮できています。 これは、スペック表にあるC2075 とK40のメモリバンド幅の比較でも144GB/s:288GB/sと倍あり、高速化の主な要因としてメモリバンド幅の差があげられます。 CPU16コアのDMPで計算を行うよりも、GPUのほうが圧倒的に早い、GPUを使わないまでもノードに余裕があれば、SMPを使うよりもDMPを使ったほうが、1コアあたりのデータ転送量が減りますので、40%ぐらい早くなるという結果も得られました。 GPGPUのコスト効果も計算してみたのですが、4コアの計算時間をベースにして16コアのアップグレードのライセンスコスト、そして、4コアと16コアの計算時間の短縮、いわゆる、ある単位コストに対しての時間削減効果というかたちで、同じようにGPUでもとめたところ、GPUを使うと今のライセンス費用だと3倍ぐらいのコスト効果があると考えています。 233万粒子では、やはりK20XはGPGPUのメモリ不足により実行ができませんでしたが、K40ではGPGPUのメモリ拡張により実行ができました。 最後に、Particleworksへの期待としては、GPGPU適用以外での更なる高速化もお願いしたいと思っています。また、GPGPUへの期待は、実効性能を上げるようにCUDAの改良などを含めてやっていただければと思っています。 岩田様 GPUを入れたほうがいいか、コアを増やしたほうがいいか、というライセンスの費用対効果まで踏み込んで調べていただき、皆様にも大変参考になったのではないかと思います。 それでは他のパネラーの方々に簡単な自己紹介と、Particleworksあるいは並列化についてのコメントを頂ければと思います。 株式会社本田技術研究所 二輪R&Dセンター 佐藤 勝彦 様 私の事業所では二輪車の研究開発を行なっており、私の部署は、トランスミッション全般の製品開発を行なっています。・・・つづく ※続きは、下記の申込みフォームへ連絡先をご記入ください。折り返し、PDFファイルのダウンロードサイトをご案内いたします。 ※同業社様からのお申し込みはお断りする場合もございますので予めご了承下さい。 Comments are closed.
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September 2023
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